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シリーズ「免疫毒性研究の若い力」11
先生方との出会い
木戸 尊將
(東京慈恵会医科大学環境保健医学講座)

 免疫を専門に研究されている若手研究者の先生方を差し置いて、まだ免疫毒性研究に携わり日の浅い私のような者に電子レターに記載して頂けるような機会を与えて頂き、心より嬉しく思います。私の免疫学の学問に対する知識はまだ浅学非才でございますが、本学会を通じて知識を深め、免疫毒性研究者として恥じないように研究していきたいと思っております。何卒、御指導の程をよろしくお願い申し上げます。

 まだ、大学院を修了し日が浅い為、免疫毒性の研究は多くはないですが恥ずかしながら御紹介させて頂きたく思います。麻布大学を卒業後、北里大学医学部衛生学の相澤好治教授の門を叩きました。大学院に入学した私は知識も乏しく、免疫学の知識も講義でしかありませんでした。しかし、同教室の角田正史准教授が知識の乏しい私に研究の基礎と勉学(衛生学・免疫学)について授けて下さいました。角田先生から最初に与えられたテーマが、クリーニング溶剤に対する簡便な培養細胞を用いた免疫毒性機序の評価でした。クリーニング溶剤は環境及び安全性が考えられ、テトラクロロエチレンから石油系溶剤へと切り替わりました。しかし、接触性皮膚炎を発症する事例もあり、安全性について検討することになりました。評価方法としては簡便に培養可能なマウスJ744.1細胞に石油系溶剤曝露し、生存率に加え、Realtime RT-PCRを用いて炎症系サイトカインの発現及びアレルギー因子のサイトカイン発現評価を行いました。その結果、炎症系サイトカインが対照群より有意に高く、高濃度曝露となるとアレルギー因子のサイトカイン発現も有意に高くなる結果となりました(Kido, et al. (2013), Industrial Health, Epub)。

 この研究の次に与えられたテーマが現在も研究を進めているフッ素の毒性に対する研究でした。フッ素は発展途上国を中心に地下水によるフッ素汚染が深刻な問題となっており、最近の情報では南米では10ppmものフッ素が検出された例もあります。体内に摂取された場合はフッ素は腎臓から排出されますが、腎機能が低下している場合には毒性が強まります。故に腎疾患がある場合はフッ素の毒性が強くなる可能性があり、生体影響を探るために研究を行いました。

 一年目は糸球体腎炎自然発症(ICGN)マウスを用いて研究を行いました。ICGNマウスでは代謝、病理、臓器中フッ素濃度、そして免疫毒性、特に骨代謝の視点から研究を行いました。その結果、フッ素の毒性により糸球体濾過機能の低下、臓器中フッ素濃度の上昇が確認されました。免疫毒性としては有意差までは至らなかったものの、IL-6の発現が低下することがわかりました。

 この結果を二年目より免疫に深く関与しているIgA腎炎(HIGA)マウスの研究を行いました。測定項目としてはICGNマウスと同様ですが、免疫毒性は炎症、骨、免疫グロブリンの観点から検討を行いました。その結果、TGF-β1, TNF-α, IL-17A, IL-1βの発現が対照群と比較して有意な結果を示しました(第19回免疫毒性学会発表)。

 また、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の全身曝露を行う研究プロジェクトにも共同研究として参加させて頂きました。全身曝露という特殊な曝露したラットの免疫毒性を検討するという機会を頂きました。内容としてはMWCNTを曝露した後に免疫の中枢である脾臓のマクロファージとTリンパ球から、mRNAを抽出しRealtime RT-PCRを用いて炎症系サイトカイン、腫瘍と関係のあるIL-2、細胞抑制と免疫抑制の観点からIL-10, TGF- β1の発現を検討しました。その結果、炎症系サイトカインの発現上昇に加え、IL-2発現が対照より低下する結果となりました(第86回日本産業衛生学会発表)。

 現在は東京慈恵会医科大学環境保健医学講座の助教として移り、柳澤裕之教授の下で必須微量元素の亜鉛に関する研究及び腎疾患に対する免疫毒性的側面からの研究を行っております。研究としてはまだ始まったばかりで試行錯誤をしながら日々研究に精進しており、毎日が柳澤教授より学ぶことばかりです。

 以上、簡単ではございますが、研究の御報告をさせて頂きました。今後もこの本学会を通じて免疫毒性学の勉強に励みたいと思います。先生方には御迷惑をお掛けすることが多々あると思いますが、ご指導の程をよろしくお願い申し上げます。

 
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