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学生若手優秀賞
ヒスタミンH4受容体拮抗薬の長期外用
ステロイド療法に伴う掻痒予防の有用性
小沼 盛司
千葉大学大学院薬学研究院高齢者薬剤学研究室
修士課程1年
小沼 盛司

この度、第21回日本免疫毒性学会学術年会において学生・若手優秀発表賞を賜り、誠に有難う御座います。審査委員の先生方に厚く御礼を申し上げます。それでは拙文ながら、受賞頂きました演題「ヒスタミンH4受容体拮抗薬の長期外用ステロイド療法に伴う掻痒予防の有用性」について紹介させて頂きます。

ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎をはじめとする慢性皮膚疾患の第一選択薬として広く用いられており、皮膚の炎症を強力に抑制しますが、主症状の一つである痒みを抑える作用については明確なエビデンスは殆どありません。これまでに本研究室は、ハプテン誘発慢性皮膚炎モデルマウスに対しステロイドの一つであるデキサメタゾン(DEX)を長期反復塗布することで痒みがむしろ増悪することを見出し、ステロイド誘発性掻痒モデルマウスとして報告致しました1)。痒みを引き起こす起痒物質の代表例にヒスタミンが挙げられ、その受容体サブタイプの中でも痒み受容体として近年注目を集めているH4受容体(H4R)に着目し、本研究ではH4R拮抗薬がステロイド誘発性モデルマウスの痒みを抑制するかを検討しました。

痒みの指標であるマウスの掻破行動の回数はハプテン誘発皮膚炎モデルマウスに対しDEXを連日塗布したことで増加しましたが、H4R選択的拮抗薬であるJNJ39758979またはJNJ28307474の投与により掻破回数の上昇は50%程度抑制されました。一方、H1R選択的拮抗薬であるfexofenadineでは20%程度の抑制に留まりました。炎症の指標である耳介腫脹はDEXにより有意に抑制されましたが、JNJ28307474投与により更に著しく抑制されました。抗炎症因子であるannexin-A1のmRNA発現はJNJ28307474投与により亢進傾向が確認され、これがJNJ28307474による抗炎症作用の一因であることが示唆されました。以上の結果から、H4R拮抗薬は長期ステロイド外用療法に伴う痒みの悪化を予防し、且つ抗炎症作用を増強する有用な治療薬になり得る可能性が示されました。

私はまだ修士1 年で研究者として駆け出しの身であり、今回が本学会における初めての発表であると共に学会発表に臨んだのもまだ2 回目で、緊張と不安に包まれながら徳島の地を踏みましたが、本学会の先生方からは鋭い指摘の中にも温かみが感じられ、私の研究の方向性まで深く考えて下さる姿勢に感銘を受けました。多くの御指導・御助言を頂いた先生方に改めて感謝申し上げます。恐縮ながらもこのような栄えある賞を頂けたのも、ステロイド外用剤による副作用が臨床上の解決すべき問題として依然重要であるからだと感じ、この研究をますます発展させなければと身が引き締まる思いです。最後になりましたが、H4R拮抗薬を御供与頂きましたヤンセンファーマ株式会社、御指導頂いている樋坂章博教授、山浦克典准教授、佐藤洋美助教、そして多大なる御指導・御鞭撻を賜りました上野光一名誉教授に厚く御礼申し上げます。

文献
1 )Yamaura et al. J Toxicol Sci. 2011; 36(4): 395-401

 
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