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学生若手優秀賞
金属アレルギー発症におけるナノ粒子の役割
平井 敏郎
大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野
博士後期課程3年
平井 敏郎

この度は、第21回日本免疫毒性学会学術年会において、学生・若手優秀発表賞を賜り、大変光栄に存じます。選考して頂いた先生方に心より御礼を申し上げますと共に、発表に際し、熱心にご指導頂きました諸先生方に感謝申し上げます。また、日々ご指導頂いております、大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野・教授 堤康央先生、准教授 吉岡靖雄先生、助教 東阪和馬先生を初めとする先生方、共にマウスと格闘する毒性学分野の学生一同に深謝いたします。

今回私は、金属アレルギーの発症機序に関して、新しい角度から検討を行いました。金属アレルギーは、女性では20%もが罹患するとの報告もある、非常に身近なアレルギー疾患の一つです。これまでは、身に着けたアクセサリー等から、汗などを介して溶けだしたイオンを曝露することが、金属アレルギーの発症要因だと考えられてきました。しかし、単にイオンを曝露するのみでは、マウスにおいて金属アレルギーが誘導されず、金属アレルギーの発症には未知の要因が潜んでいる可能性が考えられてきました。本観点に関して、近年、金属イオンに対する自然免疫認識の種差により説明可能だとする説が出されました。しかし、本理論を応用した動物モデルの再現性には疑問符が投げかけられており、未だ十分な機序の解明には至っていない状況でした。このような中、アクセサリーを含めた金属から、イオンだけではなく、ナノ粒子が自然に発生してくることが明らかとなってきました。ナノ粒子は、イオンなどと同様に、皮膚等のバリアを突破して体内に侵入することが指摘されています。従って、我々が金属と接した際に体内へ侵入してくる金属の形態として、イオンのみならず、ナノ粒子の形態があることが想定されました。そこで本検討では、金属ナノ粒子が金属アレルギー発症に与える影響を評価し、イオンではなく、ナノ粒子を曝露することが、金属アレルギー発症に重要である可能性を明らかとしました。現在、イオンとは全く異なる金属ナノ粒子の体内動態の観点から、なぜイオンではなく、金属ナノ粒子の曝露によって感作が成立するのかを調べています。本研究が、金属アレルギーの発症機序の解明、さらにはその予防等へ繋がるよう、今後ますます気合を入れて研究を進めたいと思います。

私は、博士一年であった3 年前から本学会の方へ参加させて頂き、今回で3 度目の発表・参加となりますが、参加させて頂いた初年度以降、本学会への参加を非常に楽しみにしております。免疫毒性学会における先生方の発表や講演は、通常の基礎研究者が目をつぶってやり過ごしたいような部分、複雑な部分にこそ平気で踏み込んでいくような、少し泥臭いながら、だからこそ親近感を感じられる、興味深いものが多いと思っています。私自身は、来年度からはしばし留学させていただく予定になっておりますが、本学会で学んだスピリットを忘れず研究に邁進し、帰国後に、ぜひ一回り大きくなって、また参加させて頂ければと考えています。免疫毒性学会の先生方には、今後ともご指導・ご鞭撻を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

 
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