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第19回日本免疫毒性学会学術大会報告
柳澤 裕之
(東京慈恵会医科大学 環境保健医学講座)

 第19回日本免疫毒性学会学術大会を、平成24年9 月 15日(土)、16日(日)の両日に亘り、東京慈恵会医科大学 大学一号館三階講堂で、日本産業衛生学会アレルギー・免疫毒性研究会(第61回研究会)との共催で開催した。メインテーマを「免疫毒性疾患の新しい様相」とし、特別講演( 2 題)、教育講演( 2 題)、シンポジウム( 3 題)、試験法ワークショップ( 5 題)、奨励賞受賞講演( 2 題)、一般演題(20題)、学生・若手セッション( 6 題)、ランチョンセミナー( 2 題)を企画した。今回は教育講演の中で、メインテーマを反映する「免疫毒性疾患の新しい領域とその考え方」を紹介した。また、来年は本学会が設立20周年を迎えることから、その記念を兼ねた特別講演を企画した。

1.特別講演
 Henk van Loveren先生(Maastrick University,National Institute of Public Health and the Environment,The Netherlands) による特別講演1 「Overview and Application of the WHO/IPCS Harmonized Guidance for Immunotoxicity Risk Assessment for Chemicals」では、化学物質の免疫毒性リスク評価の最新知見とその応用についてお話いただいた。大沢基保先生((財)食品薬品安全センター 秦野研究所)の特別講演2 「免疫毒性研究の温故知新―免疫毒性学会の発足経過と20周年への提言」では、日本免疫毒性学会が設立された経緯と設立の目的、今後の日本免疫毒性学会の進むべき方向性についてご講演いただいた。

2.教育講演
 近藤一博先生(東京慈恵会医科大学 ウイルス学講座)から、教育講演1 「疲労の分子機構と免疫毒性との関係」についてご講演いただいた。この講演の中で、ヒトヘルペスウイルスを用いた疲労の定量的測定と、疲労によりサイトカインが誘導され、情緒不安定やうつ病が誘発されるメカニズムについて詳細なお話があった。また、宮崎徹先生(東京大学大学院医学系研究科 疾病生命工学センター 分子病態医科学部門)による教育講演2 「AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)がひも解く生活習慣病としての自己免疫疾患」では、自己免疫としての生活習慣病の発生機序と予防法が詳細かつ興味深く述べられた。

3.シンポジウム
 シンポジウムは「免疫毒性学研究の進歩」と題し、坂部貢先生(東海大学医学部医学科 基礎医学系 生体構造機能学領域)の「シックハウス症候群の現状と対策〜免疫毒性学的側面から」に始まり、石渡賢治先生(東京慈恵会医科大学 熱帯医学講座)から「寄生虫感染における腸管免疫の進歩」が紹介され、西村泰光先生(川崎医科大学 衛生学)より「免疫学的所見に基づくアスベスト曝露者の病態解析と診断指標構築の試み」について講演があり、目まぐるしい勢いで進歩する免疫毒性学研究の新しい側面を垣間見せていただいた。

4.試験法ワークショップ
 試験法ワークショップは「In vitro immunotoxicology」をテーマに企画された。まずEmanuela Corsini先生(Laboratory of Toxicology, Dipartimento di Scienze Farmacologiche e Biomolecolari, Faculty of Pharmacy,Universita degli Studi di Milan, Italy)から「Current Trend on In Vitro Immunotoxicology in EU」が紹介され、坂口斉先生(花王株式会社 安全性評価研究所)より「樹状細胞の表面抗原発現変化を指標としたin vitro皮膚感作試験である h-CLAT の開発と応用」についてお話があった。その後、足利太可雄先生(株式会社 資生堂リサーチセンター)から「代替法による感作性の安全性評価についての研究」、相場節也先生(東北大学大学院医学系研究科 皮膚科学講座)による「サイトカインレポーター細胞を用いた免疫毒性評価系の確立」のお話があり、最後にAi-Young Lee先生(Department of Dermatology, Dongguk University Ilsan Hospital, South Korea)から「Irradiation of light emitting diode at 850 nm inhibits Tcell-induced cytokine expression」についてご講演があった。各先生から免疫毒性試験法の最新情報をご提供いただいた。

5.一般演題/学生若手セッション
 一般演題として20題、学生・若手セッションとして6題の発表があった。今年は、ポスター発表は行わず、すべて口頭発表とした。メインテーマに相応しい演題が数多く紹介され、活発な質疑応答と共に有益な助言もいただいた。学術大会終了時に、「例年よりも質疑応答が活発であった」とお褒めの言葉をいただいた。演者の皆様と活発な討論に積極的に参加して下さった皆様に感謝いたします。

6.ランチョンセミナー
 ランチョンセミナーは例年と同様に、ハンティンドン ライフサイエンス株式会社と日本チャールス・リバー株式会社に準備していただいた。1 日目は、ランチョンセミナー1 「Evaluation of anti-drug antibodies during non-clinical safety studies」と題して、Gray Bembridge先生 (Huntingdon Life Sciences Ltd.) にご講演いただいた。2 日目は、Lawrence D Jacob先生(Charles River Laboratories services)からランチョンセミナー2 「Validation and use of several assays to monitor pharmacodynamic markers intended for human use, in the cynomolgus monkey」をご講演いただいた。両セミナーから免疫毒性学的手法の進歩を実感した。
 本年度の奨励賞は、小池英子氏((独)国立環境研究所環境健康研究センター)の「環境化学物質によるアレルギー増悪機構に関する検討」と西村康光氏(川崎医科大学 衛生学)の「免疫学的所見に基づくアスベスト曝露者の病態解析と診断指標構築の試み」に与えられた。また、年会賞は打田光宏氏(Meiji Seika ファルマ株式会社)の「Human cell line activation Test(h-CLAT)を用いた医薬品のアレルゲン性評価」が受賞した。昨年度から設けられた学生・若手優秀発表賞は、平井敏郎氏(大阪大学大学院 薬学研究科 毒性学分野)の「安全なナノマテリアルの創製に向けた免疫毒性評価:非晶質ナノシリカによる新たな免疫作用」と岡村和幸氏((独)国立環境研究所環境健康研究センター 分子毒性機構研究室、筑波大学大学院 生命環境科学研究科 持続環境学専攻)の「ヒ素が誘導するsenescenceへのp130の関与」が受賞した。エントリーされた6 題すべてが素晴らしい研究であり、審査結果は甲乙つけ難く僅小差であった。今後のさらなる発展が期待される。
 本年度は、例年より参加者が少な目であった。その理由の一つは、開催日が土曜日と日曜日であり、企業の皆様方が出席しにくい曜日であったと思われる。開催する曜日については、今後検討が必要と思われる。最後に、本年会に協賛、共催、ご支援、ご協力を賜りました学会並びに企業の皆様方に深謝いたします。
 また、本年会の企画、運営にご協力をいただいた学会事務局、実行委員会、大会事務局の皆様方、講座員一同に年会長として心より感謝いたします。
 
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