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第15回日本免疫毒性学会学術大会報告
澤田純一(年会長)

 平成20年9月11日(木)・12日(金)の2日間にわたり、第15回日本免疫毒性学会学術大会が、「免疫毒性研究の新展開」というテーマの下、東京(タワーホール船堀)にて開催された。今回は、第52回日本産業衛生学会 アレルギー・免疫毒性研究会との共催とされた。また、本大会の開催に際し、日本薬学会、日本衛生学会、日本トキシコロジー学会、日本毒性病理学会の共催・協賛を頂いた。

 本学術大会では、招聘講演、基調講演、教育講演、2つのシンポジウム、ワークショップが企画され、活発な討議が行われた。一般演題は、口頭発表15題、ポスター発表17題の計32題の発表が行われた。参加者は、招待演者を含めると185名であった。また、高校生12名の見学もあった。なお、一日目の昼に総会が開催され、予算及び決算、委員会の再編、新評議員等が議題とされた。また、名誉会員の推戴も行われた(学会ホームページに掲載の議事録を参照)。

 講演に関しては、ミシシッピー州立大学S.B. Pruett教授を招聘し、“Immunotoxicology of innnate immunity”のタイトルで自然免疫に関する免疫毒性学的な観点からの講演を頂いた。また、前回大会のテーマとされたトキシコゲノミクスの分野で、国立環境研究所 野原恵子先生に「環境化学物質のイムノトキシコゲノミクス」の講演を頂いた。年会長講演として、「遺伝子多型と抗がん剤の骨髄毒性」のタイトルで、最近の知見をご紹介した。
 
 シンポジウム1「ナノ粒子の生体影響」では、「産業用ナノ物質の健康影響評価について」(広瀬明彦 国立医薬品食品衛生研究所)、「ナノ粒子のキャラクタリゼーションとラット肺における生体影響」(大神 明ら、産業医科大学 産業生態科学研究所他)、「ナノ粒子が呼吸器・血管系の脆弱状態へ及ぼす複合影響」(井上 健一郎ら、(独)国立環境研究所 環境健康研究領域)、「ナノ粒子の皮膚暴露・皮膚浸透の可能性を考える」(杉林堅次、城西大学 薬学部)のタイトルで、シンポジウム2「腸管免疫系とその調節」では、「レチノイドによる腸管免疫の制御」(岩田 誠ら、徳島文理大学香川薬学部他)、「腸管免疫を介したアレルギー −マウスの食物アレルギーモデルの確立−」(新藤 智子ら、食品薬品安全センター他)、「プロバイオティクス乳酸菌によるマクロファージの機能制御と免疫調節作用」(志田 寛、(株)ヤクルト本社中央研究所)、”Mucosal immune dysfunction by the trichothecene mycotoxins”(James J. Pestka, Center for Integrative Toxicology, Michigan State University, USA)のタイトルで、それぞれの専門分野での最近のトピックスやテーマをご紹介いただいた。なお、シンポジウム2のJ.J. Pestka教授は、米国トキシコロジー学会の免疫毒性学分科会(SOT-Immunotoxicology Specialty Section) との交流の一環として参加された。

 ワークショップ「医薬品の副次的免疫調節作用とアレルゲン性を考える」では、副次的免疫調節作用として、「PPARアゴニストの免疫調節作用」(植木 重治、秋田大学 医学部 臨床検査医学)、「ドパミンの免疫調節作用」(中野 和久、産業医科大学 医学部 第一内科学)の講演が行われ、アレルゲン性に関連しては、「非RIによる皮膚感作性試験代替法(LLNA法)のバリデーション研究−試験概要−」(小島 肇ら、国立医薬品食品衛生研究所)、「非RIによるLLNA法のバリデーション −データ解析−」(大森 崇ら、京都大学大学院 医学研究科他)、「ICCVAM LLNA peer review 報告」(吉田 貴彦 旭川医科大学)の講演が行われた。

 また、例年のように、ランチョンセミナー2演題も行われた。

 一般講演は、口頭発表15題、ポスター発表17題となった。5名の審査員による一次審査及び二次審査の結果、一般演題の口頭発表の中より、年会賞及び奨励賞の選考がなされた。年会賞は、林奉権氏ら(放射線影響研究所 放射線生物学/分子疫学部)の「原爆被爆者における加齢に関連した炎症指標の上昇と放射線被曝の影響」が、奨励賞には、斎藤嘉朗氏ら(国立医薬品食品衛生研究所,SJS/TEN遺伝子多型研究班)による「日本人におけるスティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死症と相関するHLAタイプの探索(第一報)」が選ばれた。学術大会の最後の授与式で、年会長より、賞状と副賞が手渡された。なお、優れた発表が多く、選考に苦労されたと聞いている。

 今回は、海外からの一般演題の応募が2件(O-06及びP-15)あった。O-06は、韓国からの演題であり、講演の最後に韓国における免疫毒性研究の動向紹介も行われた。
 
 最後に、学術大会の開催に当たり、ご講演の快諾、数多くの一般演題の申し込み、学術大会運営へのアドバイス等、ご協力をいただきました多くの方々に深く感謝したい。
 
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