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第11回日本免疫毒性学会学術大会報告
日下 幸則(学術大会会長)

 本年度の学術大会は第44回日本産業衛生学会アレルギー免疫毒性研究会と第35回日本職業・環境アレルギー学会との三者協賛大会で2004年免疫毒性・アレルギー学会として、9月10日(金)〜11日(土)に福井県国際交流会館で開催された。
 本学術大会のメインテーマは「アレルギー性化学物質に抗する国際的予防体系を構築する」である。招待講演は「ナノ粒子:粒子毒性学の最前線」のテーマでケネス・ドナルドソン教授(英国 エジンバラ大学)が、特別講演は「環境と鼻アレルギー」のテーマで藤枝重治教授(福井大学医学部耳鼻咽喉科学)が、ミニレクチャーとして中野ユミ子主任研究員(大阪府立公衆衛生研究所)が講演した。このほか、「アレルギー性化学物質に抗す
る国際的予防体系を構築する」(6題)および「呼吸器アレルギーモデルのエヴィデンス」(5題)をテーマとしてシンポジウムを行った。「Non-RI使用代替免疫毒性試験法」(5題)に関するワークショップが行われた。それ以外に一般口演も37題あり活発な討論が行われた。
  学会の参加者は、県内外から180名余りの呼吸器専門医・皮膚科専門医・衛生公衆衛生専門医・薬学研究者が集まり、学術的に大変有意義なものであった。

1.招待講演
 エジンバラ大学医学部呼吸器毒性学教授のケネス・ドナルドソン講師から、「ナノ粒子:粒子毒性学の最前線」の講演を賜った。環境中の粒子による健康被害は、近年燃焼由来のナノ粒子であることが明らかになっている。ご自身のナノ粒子に関する最先端の研究を紹介されるとともに、ナノ毒性学(Nanotoxicology)の重要性を講演され非常に興味深い刺激的な内容であった。

2.特別講演
 福井大学医学部耳鼻咽喉科・頭頚部外科学教授の藤枝重治講師から、「環境とアレルギー性鼻炎」の講演を賜った。近年アレルギー疾患が増えているが、中でもアレルギー性鼻炎の増加が著しい。IgE産生亢進を認める大気汚染・内分泌撹乱物質・感染の3つの要因とアレルギー性鼻炎との関連をご自身の研究を含めて紹介されるとともに、アレルギー性鼻炎を予防できる方法を環境の面から提案された。

3.ミニレクチャー
 大阪府立公衆衛生研究所生活環境部生活衛生課主任研究員の中野ユミ子講師から、「皮膚感作モデルの分子生物学:cDNAアレイ解析による感作性物質と化学物質過敏症誘導物質の作用機構の比較検討」の講演を賜った。近年増加しているアレルギー疾患の発症要因として、環境中の微量化学物質の増加やストレスとの複合影響が考えられている。ご自身の研究として、接触皮膚炎や化学物質過敏症様モデルマウスを作成し、近年発展して来たcDNAアレイ技術を用い局所での遺伝子発現変化の解析を紹介された。

4.シンポジウムT
「アレルギー性化学物質に抗する国際的予防体系を構築する」

 世界には2,000万種以上の化学物質が存在し世界中で移送・取引されているため、化学物質の有害性を分類し、ラベルや安全性データシート(MSDS)による情報提供をするため国際連合が提案する共通の統一されたシステム(国際調和システム、GHS)が2003年7月国際連合より勧告出版された。基調講演として(独)産業医学総合研究所研究企画官の宮川宗之講師がGHSの分類基準の現状を報告し、群大医呼吸器アレルギー内科臨床教授の土橋邦生講師が臨床家の立場から、大阪府立呼吸器アレルギー医療センター皮膚科部長の片岡葉子講師がアレルギー性化学物質による皮膚障害を、日本化学工業協会常務理事の中田三郎講師が生産者の立場から、環境監視研究所所長の中地重晴講師が市民参加による化学物質管理を、福大医環境保健助教授の佐藤一博講師がGHSに準拠した感作性化学物質リスト(提案)について、それぞれご自身の研究を含めて最近の知見を紹介した。

5.シンポジウムU
「呼吸器アレルギー・モデルのエヴィデンス」

 気道を介して曝露される微小粒子状物質の呼吸器系の細胞毒性の実験動物による研究が進んでいる。北里大医衛生公衆衛生助教授の角田正史講師(第一発表者)が肺胞マクロファージ由来MH-S細胞を用いた細胞毒性試験法について、国立環境研究所のTin-Tin-Win-Shwe講師(第一発表者)がマウスを用いたナノ粒子の気管内投与による蛋白質産生とmRNA発現の修飾を、国立環境研究所主任研究員の山元昭二講師(第一発表者)がマウスを用いたナノ粒子の気管内投与がグラム陽性菌リポテイコ酸による炎症に及ぼす影響について講演した。

6.ワークショップ
 「Non-RI使用代替免疫毒性試験法:LLNAとNK活性測定の代替法」のテーマでヤンセンファーマ牧栄二座長と国立医薬品食品衛生研究所の澤田純一座長で行われた。三菱ウエルファーマ安全性研究所の筒井尚久講師は「LLNA法に関する製薬協共同研究報告」を、7化学物質評価研究機構日田事業所の武吉正博講師は「LLNA代替法としてのBrdU法」を、ダイセル化学工業兜]価・解析センターの山下邦彦講師は「Non-RI代替法としてのLLNA-DA法」を、帝国臓器製薬安全性・代謝研究部の柴田誠司講師(第一発表者)は「フローサイトメトリーを用いるNK細胞活性測定及びNK細胞数との相関性」を、塩野義製薬叶V薬研究所の永田雅史講師(第一発表者)は「蛍光色素を用いたNK細胞活性測定法」を報告した。

7.一般講演
 今回は口頭発表のみの募集であった。42題集まったが、内5題はシンポジウムUに変更依頼した。最終的に口頭発表37題となった。
 3年目となった優秀発表に対する年会賞、奨励賞の表彰は今大会は次のように決定された。年会賞は国立医薬品食品衛生研究所の手島玲子氏の「3才児の食物並びに吸入アレルゲン特異的IgE抗体の実態調査」に、奨励賞は万有製薬安全性研究所の皆川 愛氏に決まった。授与式にて、会長から副賞と共に賞状が授与された。
 
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