第6回日本免疫毒性研究会報告


東北大学大学院医学系研究か病理学講座 名倉 宏
2000; 5(1), 1-2

 第6回免疫毒性研究会を,『免疫毒性と内分泌』を主要テーマとして,1999年9月20,21日に仙台市で開催した。仙台という地理的条件にもかかわらず,120人以上の参加者と21題の一般演題が寄せられ,当初の目的が達せられた。

 主要テーマにあわせ,招待講演に英国Edinburgh大学のJ.Ian Mason教授による"The role of the cytochrome P450 and steroid dehydrogenase gene families in steroid metabolism and action",特別講演に東北大学の笹野公伸教授による"EndocrinologyからIntracrinologyへ"が行われ,この分野における最新の情報が紹介された。免疫機能の攪乱を起こす毒性物質群の多くがステロイド作用を有する事から,会員に今後の研究に重要な指針を提供するとともに,大きな感銘を与えた。

 国立環境研究所の藤巻秀和先生と帝京大学の大沢基保先生によるシンポジウム『Th1/Th2パラダイム』,国立医薬品食品衛生研究所の澤田純一先生とヤンセン協和(株)の牧 栄二先生によるワークショップ『アレルゲン性の予知試験』では,免疫毒性の分野でのこれらの今日的課題について,それぞれの分野での第一線で活躍している研究者を中心に最先端の研究成果と技術の進歩が話され,活発な討論が行われた。

 免疫毒性学は,さまざまな化学物資がヒトや動物の免疫系を介しその諸機能や形態に障害作用を示す機序を解明する学問領域であるが,それはいうまでもなく,医薬品や食品の安全性の検証のために最も重要な領域である。さらに今日では,我々を取り巻く環境汚染物質と健康問題とも密接な係わりを有する事が注目されている。しかも,その免疫系への直接作用ばかりでなく,神経内分泌系を介しての免疫系への作用機序も解明されつつあり,『免疫系の神経内分泌制御』も免疫毒性研究の重要なキーワードであることを,仙台の研究会で十分理解していただけたものと思う。

 最後に,この第6回研究会開催に当たり,全面的に御支援頂きました免疫毒性研究会運営委員会の先生方,及び当日研究会運営に従事してくれました笹野公伸教授はじめ東北大学病理学講座のメンバーに心から感謝申し上げたい。



第6回免疫毒性研究会報告

幹事 牧 栄二
1999; 4(2); 1

平成11年9月20,21日両日に第6回免疫毒性研究会が,仙台市艮陵会館にて,124名の会員が集い,開催された。

今回は海外からの招待講演者として,英国エジンバラ大学のJ.I.Mason教授をお呼びして講演をお願いした。

Mason教授からは,チトクロームP450とステロイド脱水素酵素遺伝子ファミリーのステロイド代謝とその作用における役割について,免疫機能に及ぼす作用との関わり合いを交えた講演があった。

「Th1/Th2パラダイムと免疫毒性」に関するシンポジウムでは,Th1/Th2バランスと免疫反応の関係についていろいろな角度からの報告があり,Th1/Th2バランスについて知識と考え方を深めるものであった。

「アレルゲン性の予知試験」に関するワークショップでは,現行の液性ならびに細胞性免疫試験法の長所・短所を明らかにするもので,大変興味深いものであった。

特別講演として,東北大・笹野教授から「EndocrinologyからIntracrinologyへ」について講演があり,intracrinologyの解明の重要性と奥深さがよく理解できた。

一般演題は21題あり,何れの演題においても活発な討議が行われ,当研究会の趣旨に沿うものであった。