ImmunoTox Letter

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サンアントニオでのSOT年次総会ならびにITSSへの参加報告
第57回Society of Toxicology年次総会ならびにITSS参加報告

木戸尊將
(東京慈恵会医科大学 環境保健医学講座)

木戸尊將先生
木戸尊將先生

 去る3月に米国テキサス州サンアントニオで開催されましたSociety of Toxicology(SOT)の年次総会ならびにImmnotoxicology specialty sectionに参加して参りました東京慈恵会医科大学の木戸尊將と申します。私自身、SOTへの参加は7年前のSan Franciscoが初めての参加で、毎年、角田正史先生(現在; 防衛医科大学)と一緒に参加させて頂いております。サンアントニオ訪問は2回目ということもあり、行きのフライトは予定通り現地入りできました。翌日、学会初日のImmunotoxicology sessionのポスター(演題数53)で私は発表があり、早朝からポスター掲示を行い、同じセッションでポスター発表する川崎医科大学衛生学の西村先生を待ちました。しかし、西村先生は飛行機トラブルでご自身の旅行バックが届かずに発表するポスターもない状況でした。そして、ご一緒にFedExにポスター印刷を行い、高額料金支払い後、リバーウォークで景色を見ながら昼食をとり午後のポスター発表を迎えました。今回の私のタイトルは「亜鉛欠乏症における脾臓Th1/Th2細胞を介した炎症反応とIL-4投与の効果」についての研究を発表しました。研究内容としては、亜鉛欠乏症に起因する免疫機能の低下は炎症反応を増悪させることが報告されています。我々の先行研究において、Th2リンパ球数とIL-4発現が減少することで、抗炎症作用"M2マクロファージ"への分化が抑制され、その結果、炎症を抑制できないことを明きからにしておりましたので、今回は、この亜鉛欠乏状態のラットにIL-4を投与することで炎症を改善できることを発表しました。このポスターセッションの発表は多岐にわたり、勉強になると同時に、コアタイムには、国内外の研究者や企業の方から質問を頂き、今後の亜鉛と免疫毒性研究がより発展するアドバイスも頂きました。
 次の日、研究の都合により朝一に日本に戻る予定となっており、空港に向かいました。しかし、飛行機トラブルでダラス行きの飛行機が遅れており、日本に戻れなくなってしまいました。西村先生の次は我々か…っという気持ちでした。そして、サンアントニオにもう一泊滞在することが決定し、SOTの会場へ戻りました。しかし、幸運なことに人生万事塞翁が馬、当初は参加できない予定であったImmunotoxicityの口演session(10演題)にも参加でき、西村先生の口演も拝聴できました。西村先生の悪性中皮腫患者と胸膜肥厚患者の間の免疫的な特徴の相違の発表に加えて、発達神経毒性、神経免疫、蛋白に対する免疫反応への修飾、ヒ素のワクチンの免疫原性及び感染症への影響など、こちらも現在の免疫毒性研究の最先端をカバーする内容と思いました。そして夕方にはITSSへ参加することが叶いました。日本免疫毒性学会からは香山不二雄先生、中村和市先生、角田正史先生、西村泰光先生が参加され例年よりも少なく今年は少数精鋭というところでしょうか…。代表を務められているDr. Victor J. Johnsonの挨拶から始まり表彰式では私と同じくらいの研究者の方が受賞されており、私も免疫毒性学研究を頑張らねばっという気持ちにもなりました。そして、次の日は問題なく飛行機が出発し日本へ戻りました。
 この度のSOTはトラブルもありましたが、愉快でよい刺激になる旅となりました。なお学会全体ではimmunotoxicityをキーワードにした発表が56あり、現在の免疫毒性研究の隆盛を垣間見ることができる学会だと思います。次回の開催地はBaltimoreです。来年の3月に向けて研究に励み、会員の皆様の多くと学会場でお会いしたいと思います。