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評議員就任にあたり
木戸 尊將
東京慈恵会医科大学環境保健医学講座
木戸 尊將

この度、日本免疫毒性学会の新評議員に就任させて頂きました、東京慈恵会医科大学環境保健医学講座の木戸尊將と申します。免疫毒性学に対する知識はまだ浅学非才でございますが、御推薦して頂きました東京慈恵会医科大学環境保健医学講座教授の柳澤裕之先生及び北里大学医学部衛生学准教授の角田正史先生、そして承認して頂きました理事の先生方の御希望に添えるように務めて参りたいと思っております。かなりの若手ですが、何卒、御指導の程をよろしくお願い申し上げます。

免疫毒性分野の研究は多くはないですが御紹介させて頂きます。北里大学医学部衛生学の大学院生として、当時の相澤好治教授の下で衛生学について学びました。研究内容としてはマクロファージ系細胞を用いたクリーニング溶剤の簡易評価試験を行いました。

その結果、炎症系サイトカインが対照群より溶剤曝露群で有意に高く発現し、高濃度曝露となるとアレルギー因子のサイトカイン発現も有意に高くなることが示唆されました(Kido et al., Industrial Health 2013)。

また、動物を用いたIn vivo研究として、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)の全身曝露を行う研究プロジェクトを日本バイオアッセイ研究所と共同で行いました。全身曝露は実際の環境中曝露に最も近いと考えられますが、その実験的困難性から、実際に行われた例は稀です。バイオアッセイが確立した全身曝露システムによりMWCNTに曝露された、ラットの脾臓由来の免疫毒性を検討するため、脾臓からマクロファージとTリンパ球を分離し、Real-time RT-PCRを用いて炎症系サイトカイン、腫瘍と関係のあるIL-2の発現を検討しました。その結果、炎症系サイトカイン及び前駆体のケモカインMIP-1α発現上昇に加え、IL-2発現が対照より低下することが示唆されました(Kido, et al., Inhalation Toxicology 2014)。

現在は東京慈恵会医科大学環境保健医学講座の助教として移り、微量元素である亜鉛の欠乏/過剰状態の免疫機能への影響を動物モデルを用いて研究しております。近年の疫学研究により、血清中の亜鉛値が低下していることで、免疫力が低下し敗血症や肺炎などの感染性疾患を増強させることが指摘されており、また、亜鉛欠乏を呈することで全身性免疫を低下させることも示唆されております。そこで我々は、亜鉛欠乏が免疫機能を低下させるメカニズムを解明するために免疫担当臓器から免疫細胞を抽出し、系統的かつ網羅的に評価するために試行錯誤をしながら日々研究に精進しております。

以上、簡単ではございますが、研究の御報告をさせて頂きました。今後もこの本学会を通じて免疫毒性学の勉強に励みたいと思います。先生方には御迷惑をお掛けすることが多々あると思いますが、ご指導の程をよろしくお願い申し上げます。

 
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