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Non-category (寄稿・挨拶・随想・その他)
第53回米国トキシコロジー学会
免疫毒性専門部会参加報告
日本免疫毒性学会国際化委員長
中村 和市

(塩野義製薬株式会社)

第53回米国トキシコロジー学会(SOT)年会が2014年3 月23日(日)から27日(木)にかけてアリゾナ州フェニックスのコンベンションセンターで開催された。SOTでは、学会長が1 年ごとに選任され、その任期の締めくくりとして3 月に年会長を務める。今回の年会長は企業出身でBristol-Myers Squibb社のDr. Lois D. Lehman-McKeemanであった。3 月23日(日)に継続教育コースが企画されたのち、3 月24日(月)にはノーベル賞受賞者のJohn B.Gurdon教授(ケンブリッジ大学)による多能性と細胞のリプログラミンについての基調講演が行われ、本格的に年会のプログラムが開始された。Gurdon教授の講演を身近に聴けたことは有難かった。今回のSOT年会でのシンポジウムとワークショップの数は、それぞれ22、29個にのぼった。ちなみに第41回日本毒性学会学術年会でのシンポジウムとワークショップの数は、それぞれ21(加えてミニシンポジウムが4 )、10個であるが、参加者数、一般講演やポスター発表、企業展示の数ではいずれもSOTの方が約3 倍程度の規模になるのではないだろうか。

さて、例年、年会にあわせて種々の専門部会(Specialty Section: SS)の会合が通常火曜日ないし水曜日の夕方に開かれる。免疫毒性専門部会(ISS)の会合は、3月26日(水)の夕方6 時から年会場の近くのSheraton DowntownホテルのValley of the Sunと呼ばれる部屋で行われた。何だか、日本の医薬品開発でアカデミアと企業の間にある死の谷に抗した部屋の名前のようにも思われた。この会合では、専門部会の年会費をもとに簡単な食べ物(無料)と飲み物(時に有料)が提供され、誰でも歓迎していただける。私も、免疫毒性研究に直接関わっていない北大の若い先生方や愛媛大の大学院生に専門部会の雰囲気を知ってもらうための声をかけた。通常は、ISSの1 年間の活動を振り返り、私も一部の選考委員になったことのあるStudent Award、Postdoctoral Trainee Award、Best Paper of the Year Award、Outstanding Young Immunotoxicologist Award、Outstanding Senior Immunotoxicologist Award(新規)、HESI Immunotoxicology Young Investigator Travel Award、Vos Lifetime Career Achievement Awardなどの授賞式が行われる。

今年のISSの会合では、JSOTの最近の活動について紹介する機会をいただいた。昨年、私からこの提案をしたときには、ISSの部会長であるDr. Gary R. Burleson(BRT-Burleson Research Technologies, Inc.) をはじめ他の委員からも趣旨を理解してもらえなかった。実は、ISSと日本免疫毒性学会(JSIT)間のResearcher Exchange Programの一環で行われてきた合同シンポジウムの企画が、第50回SOT年会(2011年3 月、サンフランシスコ)を最後に途絶えている。様々な要因があると思われるが、このままではJSITとのResearcher Exchange Programの活動も消滅するのではないかとの危惧があった。今一度、ISSの人達にResearcher Exchange Programの活動、意義を周知していただきたいという意図があったのである。そこで、ISSの幹部とは電話会議を持ち、その旨を説明し承認いただいたという経緯がある。JSITから一部支援をいただき、ISSの会合のプログラムのなかで、最初に20分間ほど発表することになった。発表のなかでは、Researcher Exchange Programの仕組みを改めて紹介した。また、過去より未来志向で、大阪大学の吉岡靖男先生、千葉大学の山浦克典先生、川崎医科大学の大槻剛巳先生、国立環境研究所の岡村和幸先生からお借りしたスライドをもとに"Next Generation of Immunotoxicology Research in Japan"についてお話させていただいた。また、京都大学の高野裕久先生の研究室のお仕事も紹介させていただいた。また、9 月11(木)〜12日(金)に徳島で開催される第21回日本免疫毒性学会学術年会(年会長:姫野誠一郎 先生)の案内をさせていただきつつ、ISSからJSITへの派遣も毎年確実に行われていることも示した。ユーモアもまじえて印象的な発表になったのだが、今後現実に新たな進展がおきるかどうかについては見極める必要があると考えている。何より、「免疫毒性学―未来図を探る」(第20回日本免疫毒性学会学術年会テーマ)ことから始め、「免疫毒性学研究の新たな一歩」(第21回日本免疫毒性学会学術年会テーマ)を踏み出す必要があると考えているのは、私だけではないようである。我々も、JSIT全体の課題として、このResearcher Exchange Programに取り組んでいただきたいと思うのである。



 
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