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Non-category (寄稿・挨拶・随想・その他)
新理事に就任して
森本 泰夫
(産業医科大学産業生態科学研究所呼吸病態学)

このたび、新理事に就任させていただくことになりました。本学会の発展のために、皆様のご指導を賜りながら、微力ではございますが、お役に立てるよう努力していく所存でございますので、よろしくお願いします。

自己紹介をさせていただきます。昭和61年に鹿児島大学医学部を卒業後、産業医科大学の呼吸器内科医として7 年間勤務し、その後、産業医科大学、産業生態科学研究所にて産業医学、特に職業性呼吸器疾患の予防や吸入性化学物質のリスク評価などの研究に携わっております。当初の研究は、人造鉱物繊維の生体影響をテーマとしており、セラミックファイバーの吸入曝露による肺への影響、セラミックファイバーとたばこの生体影響に対する協調作用などの研究を通して学位を取得しました。これらの研究が功を奏したのかは不明ですが、リヨンで行われた国際がん研究機関(IARC)に2 度招聘を受け、人造鉱物繊維の発がん分類の評価に携わりました。このとき、ひとつの物質の発がん性は、疫学研究、動物試験、培養試験など様々な研究のエンドポイントと発がん性の整合性、関連性を検証し、一つの結論として導き出されたものであることを体感し、発がん性を評価するための総合的理解および判断の難しさを実感しました。米国ニューヨーク州のロチェスター大学に1 年間留学し、トランスジェニックマウスの作成、気道炎症における末梢気道上皮細胞の役割に関する研究を行いました。まだ、当時では珍しいコンディショナルな遺伝子改変動物の作成に携わりましたが、小学校の理科の実験で使用するような機材をふんだんに用いていたことに驚きを覚えました。10年前くらいから、ナノ材料の生体影響の研究を本格的に行うようになりました。当初は、ナノ材料の特性、つまり、凝集してサイズがミクロンやミリサイズになることに戸惑いましたが、物質の製造、発じん、計測などの各専門機関と連携をとり、非常に凝集性の少ない(凝集サイズが100nm以下)状態に分散することに成功し、その分散した粒子で動物試験を行い、現在に至っています。ナノ材料を含め素材に関しては、科学技術の進歩が加速的に進んでいる昨今において、素材の大幅な改良が行われることが予想され、場合によっては、長い年月、人の影響を観察する疫学的研究が十分に行われない状況も考えられます。よって、人の影響を十分に反映できるような信頼性の高い動物試験や培養試験を行う必要であり、これらの確立を基盤として人の健康障害の予防を目指して、研究、教育などに邁進していこうと考えます。皆様のご指導、ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

 
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