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Non-category (寄稿・挨拶・随想・その他)
記念すべき第50回SOT Annual Meetingに参加して
吉田 貴彦
(旭川医科大学医学部健康科学講座)

 私にとって初めてのSOT参加は、1992年にNational Institute of Environmental Health Sciences(NIEHS)に研究留学した直後の3月にSeattleで開催された時であるから、早20年も経とうとしている。自らの発表を行ったのは、留学2年目の1993年New Orleansである。留学前の1991年にFlorida州Tampaで開催された、International Society of Immunopharmacology(ISIP、国際免疫薬理学会)にも参加したことがあるので比較してみると、SOTにおける免疫毒性学領域の研究発表のレベルはSOTがアメリカの国内学会であるものの、発展途上国も含む様々な国々の研究者が集うISIPのレベルよりも高く、なおかつ先進国を中心に世界の主だった国々から毎年に研究者が集まることから最新の情報が得られるなど、SOTに参加する事に優位性を感じた。そのため、留学から帰国してSOT会員となり、その後も何回か参加してきた。しかし、この数年間は参加の機会がなかったのであるが、2011年3月Washington D.C.で開催された第50回SOTに日本免疫毒性学会からImmunotoxicology Specialty Section( ITox-SS)への派遣者に指名されたことから久々の参加となった。

 SOTの各SSは毎年の学会企画に対して幾つかのセッション・テーマを提案できる事となっている。ImTox-SSは日本免疫毒性学会との交流の一環として、提案するテーマの一つを日本側がSSに提案し、それに賛同が得られた場合に双方から座長を1名ずつ出し、数名のパネリストからなるセッションを企画して提案を上げることになっている。このあたりの経緯は、ImmunoTox Letter 14(1), 2009に野原恵子先生が詳しく記載されている。2009年の第48回SOT(Baltimore)、2010年の第49回SOT(Salt Lake)に引き続き、今年は3年連続3回目となる。私が派遣されることが決まった2009年に、私はちょうどLocal lymph node assay(LLNA)の変法等について外部評価するICCVAM Peer Panel Meetingのメンバーであった。皮膚感作性の評価法が確立し変法も開発されるなど進展著しい一方で、気道感作性については、いまだにコンセンサスを得られた評価法が無いのが現状であり、自分自身でも試行錯誤をしていた経緯もあって、2011年SOTへの提案テーマとして気道感作性試験法を選んだ。SOT ImTox-SS側の座長をLLNAの開発者であるDr. Ian Kimberが担ってくれたことは大変心強かった。幸いにも学会本部にてテーマが採択され、ワークショップとして開催する事が叶った。

 3月8日9:00-11:45に、ワークショップ・セッション「Identification of Chemical Respiratory Allergens: Principles and New Development」が行われた。Dr. Ian KimberがIdentification and characterization of chemical respiratory allergens: challenges and opportunitiesとして講演し、Dr. J. PauluhnがAnimal models of chemical respiratory allergy、Dr. J.F. Lalkoが Peptide reactivity of chemical respiratory allergens、Dr. D.R.BoverhofがGene expression changes and the identification of chemical respiratory allergensとすすめ最後に私がA modified local lymph node assay for hazard identification of chemical respiratory allergensとして講演した。皮膚感作性を評価するLLNAがその特異度と感度を高めるために、リンパ球などのサイトカイン産生をタンパク産生ないしmRNA発現の測定を組み合わせて評価するなどの工夫するのと同様の試みが報告された。また、呼吸過敏性を動物で評価するモデルなども報告された。私の発表ではLLNA法であっても気道感作性物質に分類される化学物質の感作性をサイトカイン・プロファイルを組み合わせて評価し得ることと、耳介に替えての呼吸気道(鼻腔から気管支まで)での感作成立についての評価の試みを紹介した。今回のセッションでの自分の発表の準備および各パネリ
ストの講演を聞きながら、感作はいずれの部位で起ころうとも結果的に差はなく、むしろ症状的には生命への危険度が高い喘息などの呼吸気道過敏の発現段階が惹起されるかどうかがより重要であるように感じた。先行するLLNA同様に近い将来に、整理されて我々人間社会における化学物質の導入に役立てられる日が来ることを願っている。

 この他、第50回SOTでの免疫毒性学関連(他のSSとの合同提案のものを含む)のセッションは、Continuing Education Course 1、シンポジウム4、ワークショップ1、ポスター・セッション8(110演題程度)と非常に多くの発表があった。ImTox-SS Meeting/Receptionが3月9日18:00-19:30に行われ大勢の参加があった。会長(President)のDr. L.A. Burns Naasの司会のもとに会が進められ、2011-2012年度の会長のDr. R. Dietertが紹介された。本年度のVos Award - Career achievement in ImmunotoxicologyがDr. R. Smialowiczに授与されたが、本人病気欠席のため、奥さんと娘さんが代理で賞を受け、彼の研究室でポスドク研修をしたDr. R. Luebkeがスピーチを行った。他、種々の表彰があり、日本免疫毒性学会から参加した熊谷直子先生が若手研究者Travel Awardを受けた。また、ImTox-SSの各種委員会の次年度委員が発表され、中村和市先生がAwards Committeeの委員長に就任された。会場は広めであったが円卓の座席は満席で壁際に立つ人も多いほどの盛況であった。20年ほど前の廊下の片隅の様な所で行われていたmeetingを思うと隔世の感がある。今回のSOTは第50回の記念ということで、日本免疫毒性学会でブースを設け、学会HP、過去の年会の抄録の表紙、過去の本学会とImTox-SSとの交流の様子を紹介するポスター展示を行い、記念品や大槻先生の学会ソングのCDの頒布を行った。今後とも活発な交流活動が続けられることを願っている。来年のSOTには、手島玲子先生が派遣されることとなっている。


ワークショップ(中央はDr. I. Kimber, 左はDr. J. Pauluhn)


日本免疫毒性学会のブース展示(大槻先生と)


ImTox-SSのミーティング(私の左は2010年に日本に派遣された
Dr.J. Zelokoff、右は香山先生、Dr. N. Kerkvliet)
 
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