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日本免疫毒性学会のさらなる発展のために


2002; 7(1), 2-3


大沢基保
帝京大学・薬学部

 昨年の宇都宮における学会総会でご承認を頂き,2002年度より前任の 名倉 宏会長 の後を引き継ぐことになりました。名倉 宏先生には,免疫毒性研究会の発足以来日本免疫毒性学会の設立・発足に至るまで,学会の顔,また牽引車として,学域としての免疫毒性研究の社会的認知と学会の基礎を築くために多大なご貢献を頂きました。先生のご尽力にあらためて深甚の謝意を表したいと思います。一方,それを引き継ぐ任に当たり,学会の大黒柱としての先生の存在の重みをあらためて感じています。学問の起業家として先生が示された「21世紀の免疫毒性研究」の展望を,継承・発展させることが後任の役割と銘じて,微力ながら免疫毒性研究の深化と学会の発展に努力したいと思っております。

 免疫毒性に関する諸研究は,今日諸分野でなされるようになってきましたが,かえって研究の論点が分散する傾向にあります。一方,ポストゲノム時代に向けて免疫の問題が再び重要視されつつあります。学会化を検討しました折りに諸雑感を本Letterに述べさせていただきました(ImmunoToxLetter, Vol.5, No.2, 2000)が,このような免疫毒性研究を取り巻く状況は,免疫毒性研究の中核としての本学会へのニーズをますます高めていると思います。学会の成果としては,免疫毒性試験法のガイドラインの方向づけに寄与してきましたが,その他の掘り下げるべき多くの免疫毒性関連課題が待機しています。本学会が免疫毒性研究の駆動力となりうるよう,免疫毒性研究の体系化と諸課題の解明のためのアプローチを率先して提示することが求められるでしょう。そのためにも,本学会は,単に研究の成果の発表と交流の場にとどまらず,研究への新たな刺激や動機が得られたり,学問的あるいは社会的な問題提起となる情報発信の場であり続けたいと考えています。

 本学会も最近は250-60名程度の会員数を前後し,当初の研究分野を確立するという目的を達し得て,学会活動としてやや定常期に入っています。学会活動を活発にするには,免疫毒性の個別の課題に対応して研究の具体例を積み重ねる一方,もう少しいろいろな分野からの研究者に参加してもらい,新しい観点を加えて,多様な課題に対応できる普遍性のある免疫毒性研究をも発展させるべき時期になってきたかなと考えています。さらに,会員のニーズにより応えやすい学会であるよう,運営の方法を見直す必要を感じています。そこで,幹事の先生方には学会の将来構想についてのご検討をお願い致しております。発足以来の,会員にとって刺激的で風通しのよい学会のイメージを堅持する一方,幹事の先生方のご提案あるいは会員諸氏のご意見をもとに学会活動のさらなる活性化を図りたいと思っておりますので,会員の皆様のご理解とご支援・ご協力のほど,よろしくお願い申し上げます。