≪免疫毒性試験の国際動向≫ ≪ICHガイドライン≫

ICHトピックS8


2004; 9(1), 1-2


中村和市
塩野義製薬株式会社

2003年11月のICH*運営委員会会議において免疫毒性試験が新規トピックS8として正式に承認され,医薬品の免疫毒性試験に関する日米欧の統一ガイドラインが作成されることになった。

今回,免疫毒性試験が新規トピックS8として承認された理由として,第1回医薬品の免疫毒性試験の国際調和ガイドライン作成のためのICH免疫毒性データ調査(以下,ICH免疫毒性調査)の結果をもとにICHガイドライン作成に目処がついたことがあげられる。第1回ICH免疫毒性調査の結果を解析するための専門家会議は2003年10月に開かれ,寄せられた化合物データについて一般毒性試験と免疫機能検査の結果を比較し5つのカテゴリーに分類した(Table 1)。



その際,細胞傷害性の抗がん剤とサイトカインを除き,また情報の不足している化合物はカテゴリーEとした。そして,全45化合物のうち残り28化合物をカテゴリーA〜Dに分類した。最も重要と思われるカテゴリーCには3化合物が分類された。ただし,そのうち少なくとも2化合物については免疫機能検査の結果には疑問が持たれた。カテゴリーCに分類された化合物の数が少ないという結果をもとに,免疫毒性の懸念される開発化合物について免疫機能検査を行うという方向性が示された。なお,現在は第1回ICH免疫毒性調査の調査票の内容を充実したうえで,さらにデータ数を増やすことを目的とした第2回ICH免疫毒性調査を実施しており,調査票が2004年2月から3月にかけて各製薬企業に配布されている。2004年11月までには本調査の最終結論を出しICHガイドライン作成の基礎データとしたいと考えている。

免疫毒性試験が新規トピックS8として承認されたのを受け,ICH免疫毒性専門家部会が編成された。現在,同部会ではStandardization of AssaysとTriggers for ImmuneFunction Testingのサブグループを設け,ICHガイドラインの作成に向けた議論を行っている。Standardizationof Assaysのサブグループでは,何らかの形でICHガイドラインに盛り込まれると考えられるT細胞依存性抗原に対する特異抗体産生能の測定法,フローサイトメトリー,NK細胞活性の測定法などについて,時には外部からの専門家も交えながら検討を加えている。またTriggers forImmune Function Testingのサブグループでは,どのような場合に免疫機能検査が必要かについて議論を続けている。全ての化合物について免疫機能検査を行う場合には問題とならないが,一般毒性試験の結果などをもとに免疫機能検査を行う場合は申請段階で行政当局と免疫毒性試験実施の必要性に対する見解が異なってくることも考えられる。特に申請前に行政当局との相談を持つ機会の少ない欧州や日本では問題になってくる。このことを避けるためできる限り詳しくTriggers for ImmuneFunction Testingを規定しておく必要があるように思われる。これらサブグループでの議論をもとに,ワーキンググループとしての最終的な結論を出したいと考えている。本ICHトピックにおいては,2004年11月にStep 2(ガイドライン案作成),そして2005年11月にはStep 4(最終ガイドライン作成)へと進む予定となっている。

*ICH: International Conference on Harmonisation ofTechnical Requirements for Registration ofPharmaceuticals for Human Use