≪免疫毒性試験の国際動向≫ ≪ICHガイドライン≫

医療用具の免疫毒性試験の海外動向 & 医薬品の免疫毒性評価の実施手順の検討

1999; 4(2), 4-5


 医療用具の免疫毒性試験の海外動向

澤田 純一
国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部

筆者は,昨年 (平成10年6月) のトキシコロジー学会において,米国FDAのCenter for Devices and Radiological Health (CDRH)が,医療用具全般の免疫毒性試験フレームワークに関するガイダンス案を提出していることを紹介した。

その後,このガイダンスは,修正され,本年5月に正式版としてリリースされている1)

このガイダンスは,FDAのホームページ (http://www.fda.gov/cdrh/ost/ostggp/immunotox.pdf)から,pdfファイルとして自由にダウンロードできるので,興味のある方は早目に手に入れて頂きたい。

このガイダンスの中では,医療用具及びその構成成分の材質と人体への接触の度合いに応じて試験項目を考える必要性が指摘されている。

また,免疫毒性試験が必要か否かを決定するためのフローチャートと共に,免疫毒性試験項目の例が表の形でまとめられている。

本ガイダンスは,医療用具及びその構成成分の免疫毒性及びその試験法に対するCDRHの考え方を示したもので,必ずしも強制的なものではないとされている。

一方,国際標準化機構 (ISO) の技術委員会194 (TC194) のWG15の下のタスクフォース1 (小さな作業委員会) でも,FDA/CDRHガイダンスをとりいれた形で,医療用具の免疫毒性に関する報告2) を出している。

筆者の感想としては,FDA/CDRHのガイダンスと大きな相違はないように思われる。

いずれISOの正式文書として採用するように提案がなされる予定と聞いている。

1) US FDA/CDRH: Guidance for Industry and FDA Reviewers. Immunotoxicity Testing Guidance. May 6. 1999; Fed. Reg., 64 (87): 24408 (May 6, 1999) にその通知がある。

2) Report of ISO/TC 194 WG15 TF1 (immunotoxicology): Principle and methods for immunotoxicology testing of medical devices. May 11, 1999


 医薬品の免疫毒性評価の実施手順の検討

中村 和市
日本製薬工業協会 医薬品評価委員会
基礎研究部会 免疫毒性ワーキンググループ長

 日本製薬工業協会 (製薬協) の免疫毒性ワーキンググループ (WG) では,医薬品の安全性評価における免疫毒性試験のあり方について既に8年程前から取り組みを始めています。

当初はオランダ国立公衆衛生・環境研究所 (現在の名称) や米国National Toxicology Programの段階的評価法などの検討を行い,また日本免疫毒性研究会の発足に伴って各試験法のヴァリデーションのための共同研究を実施しその成果を当研究会で発表してきました。

さらに,医薬品に限定し最近の免疫毒性試験の国際的動向の把握にも努めています。

ここでは,医薬品の免疫毒性評価に関する今期2年間の我々の取り組みについて述べたいと思います。


 製薬協の免疫毒性WGでは,今期,製薬協の病理毒性WGならびに臨床病理WGと協力し医薬品の免疫毒性評価の実施手順の検討を行うことになりました。

医薬品の免疫毒性評価の実施手順を確立するために,我々はまず一般毒性試験と免疫毒性試験との関係を明確にしておく必要があると考えました。

そのためには,病理・血液学的検査と免疫機能検査の感度の違いを把握するとともに,病理・血液学的所見と免疫機能の関連性を検討することが重要であると思います。

そこで,当研究会の試験法委員会から御助言を仰ぎながら共同研究を実施することにいたしました。

この共同研究では,ラットを用い病理・血液学的検査と胸腺依存性抗原に対する抗体産生能測定試験の感度の違いならびに病理・血液学的検査の結果から免疫機能検査あるいはフローサイトメトリーを実施する際の基準を検討することを主な目的としています。

 共同研究の実施概要は以下の通りです。

 まず,SDラット (雌,8週齢) に3用量の化合物あるいは媒体 (6匹/群) を14日間連続投与します。

化合物については,免疫毒性作用の知られているものを複数用いる予定です。

化合物・媒体の第1回投与日をDay0とし,Day13に最終投与を,またDay14には病理学的検査のための材料採取,採血,血液学的検査等を行います。

それぞれ別のラットを用いて,病理・血液学的検査,plaque-forming cell (PFC) アッセイ,酵素免疫測定法 (ELISA) によるヒツジ赤血球 (SRBC) に対する抗体産生能の測定あるいはフローサイトメトリーによる胸腺,脾臓リンパ球サブセットの解析を行います。

尚,ELISAおよびPFCアッセイのためのSRBC免疫については,それぞれDay8,Day10に,また採血あるいはPFCアッセイについてはDay14に行います。

病理学的所見についてはピア・レヴューを行ったのち,各試験の結果を比較します。

ただし,今後必要に応じて試験内容を変更することもあります。

 この共同研究を通じまして,医薬品の免疫毒性評価手順に対する方向性を見出していきたいと考えており,また医薬品の免疫毒性評価のシステム作りがなされていくことも期待しています。

 共同研究には製薬協・基礎研究部会加盟の製薬企業以外の研究機関の参加も受け付けております。すべての試験に御参加いただく必要はなく,試験項目を自由に選択していただいて結構です。

 御協力いただける施設がございましたら,中村和市 [塩野義製薬(株)] まで御連絡ください。折り返し,詳しい試験計画書および手順書をお送りいたします。