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学会参加報告
牧 栄二
(財)食品農医薬品安全性評価センター

  第34回日本トキシコロジー学会学術年会が6月27日から29日の3日間、東京・江戸川区船堀のタワーホール船堀で開催され、この学会で免疫毒性に関する報告が幾つかなされたので、聴講できたものはその内容を、できなかったものについては演題だけでも報告したい。

 先ず、初日のWorkshop1で「抗体医薬品の非臨床安全性評価」が発表され、討議された。内容が昨年のTGN1412によるFirst in Human (FIH) Studyでの事故に関することもあり、会場は満員で、会場の外でモニターTVを見て聴講する会員が多く見られ、関心の大きさが窺えた。発表は、開発企業からの提言に始まり、臨床試験側からの提言、欧米における抗体医薬開発の非臨床安全性評価と続き、最後に査察側からの提言で纏められた。開発側の提言は、この分野は未知の部分が多く、化学合成医薬品とは違い、より注意深い非臨床安全性評価が必要であること、臨床試験側の提言は、治験計画書を作成に当たり非臨床の関係者の参画が重要であり、FIH Studyの投与量もNOELの1/10位から、最初は公比を大きくし、何らかの兆しが見えたら下げることが大事であること、審査側の提言は、型通りの試験を行なうのではなく、必要な試験を実施し、scientific discussion行なうことが大事であり、PMDAが目指すものは、benefitがあり、riskが最小で、costが合理的である医薬品である。英国では当局とBio産業が協力してExpert Scientific Reportを作成し、開発に役立てている。日本においても作成することができる。抗体医薬の開発に当たっては、臨床医、開発企業、規制当局の三者がお互いに協力し、透明性を持って取り組んで行きたいと締めくくられた。このテーマについては、日本免疫毒性学会の第14回学術大会のWorkshopにおいて、遅蒔きながら免疫毒性の専門分野で検討を行なうことになっている。

 一般演題の免疫毒性に関する口頭発表は2演題あり、その一つ「h-CLAT法によるメタクリル酸誘導体を用いた感作性メカニズムの検討」(金澤他、食薬センター)では、感作段階の反応に関与するTHP-1細胞を用いたh-CLAT法で得られた成績から、被験物質の感作性の構造活性相関は、感作段階で決定される可能性を示唆した。他の一つ「ブロムフェノホスにおける免疫系への影響評価」(村田他、農水省動物医薬品検査所)では、動物用一般医薬品の投与と免疫力低下に由来する感染症等の悪化との関連については報告がないことから、ヒト医薬品の免疫毒性の検討と同様に、ラット4週間強制経口投与試験が実施され、体重増加量の低下が認められる用量で、免疫系への影響が認められることを報告した。

 一般演題のポスターでは、7演題の発表があり、その内訳は、ELISPOT法による抗体産生細胞の検出(1題)、マウスを用いた化学物質の気道過敏症の検出(1題)、Flow cytometerによるリンパ球サブセット解析の検証(1題)、ラットにおける免疫毒性評価(2題)、サルにおける免疫毒性評価(2題)であり、いずれも昨年度通知された医薬品の免疫毒性試験ガイドラインに基づく試験法の検証ならびに裏付けデータの蓄積の成果を報告するものであった。何れのポスターにも学会参加者が集まり、熱心に意見交換が行なわれていた。

 企業セミナーでは、Charles River Laboratoriesが「How to improve the T-cell dependent antibody response to KLH in rats: Validation study of the antibody response and beyond」と題して、ラットを用いた4週間反復投与毒性試験におけるKLHに対するT細胞依存性抗体産生の実験手技について、その改善と免疫抑制剤によるKLH抗体産生の抑制を紹介した。一般に免疫毒性試験においてはSRBCあるいはKLHに対するIgM抗体の産生を指標に免疫毒性の評価がなされているが、この発表ではIgM抗体およびIgG抗体の両抗体に対する影響を同一の試験系で評価する工夫が紹介された。この両抗体を測定する意義は、IgM抗体からIgG抗体へのclass switchに影響する薬物の存在を確認するためには有意義な手法となる。

 以上、第34回日本トキシコロジー学会学術年会において免疫毒性に関して報告された演題について紹介した。
 
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